患者さんのご家族へ
皆様より寄せられるお問い合わせにお答えいたします。
先天性サイトメガロウイルス(先天性CMV)感染症とは?
サイトメガロウイルス(CMV)は、世界中のいたるところにいる、ありふれたウイルスです。
健康な子供や大人が感染しても全く問題ないのですが、妊婦さんが感染した場合、妊婦さんにほとんど症状がなくても、胎盤を通じてウイルスが赤ちゃんにまで感染がおよぶことがあります。こうしてウイルスに感染して生まれてきた状態を「先天性サイトメガロウイルス感染症」と呼びます。
先天性CMV感染症ではどの様な症状が起こりますか?
感染した赤ちゃんには、約30%で脳神経や聴力障がいなどを生じることがあります、こうした先天性CMV感染症を「症候性先天性CMV感染症」と呼び、難聴、てんかん、発達遅延などの症状が出現をしてきます。
一方で、感染した赤ちゃんに何も症状がでないこともあります。また、出生時に症状がなくても、成長するにつれて症状が出る場合もあります。
(参照)母子感染の予防と治療に関する研究班HP http://cmvtoxo.umin.jp/index.html
治験とは?
新しい薬が世に出るまでには、長い年月をかけてその効果や安全性(副作用)を調べる必要があります。はじめに製薬会社などの研究室で薬の候補となる物質や特徴が詳しく調べられます。次に、薬として期待される候補が選ばれます。次に、動物で『薬の候補』の効果と安全性を確認します。動物で効果と安全性が確認できた場合には、少数の健康な方や患者さんにその候補を使用していただいて、実際のヒトに対する安全性が確認されます。その後、多くの患者さんで効果があるのか、安全に使用できるのかを確認します。このようなヒトでの効果や安全性を確認する試験を「臨床試験」といい、特に国(厚生労働省)に医薬品として認めてもらうために行われる試験を「治験」、治験で使用するお薬を「治験薬」といいます。
次に、治験で受ける治療と通常の治療とで異なる点をご説明します。通常の治療の目的は、健康状態を改善することを目的としていますが、治験はそれ以外に厚生労働省に薬として認めてもらうための情報を収集する目的もあります。このため、治験に参加中は、治験薬の効果や安全性を詳しく調べるため、通常の診察よりも検査の項目や回数が増えたり、通常の診療では行わないような検査をしたり、研究的な側面もありますので、これらの点を十分に理解したうえで治験に参加させるかどうかよく考えてお決めください。
治験を行い、新しい薬を世に出すためには多くの患者さんの協力が必要です。現在私たちが病気やけがをしたときに使用している薬もすべて、長い年月をかけて治験を積み重ねることによって創り出されたものであり、これはひとえに治験に参加していただいた方々のご協力のたまものです。
医師主導治験とは?
治験には、製薬企業が主体となって行う治験と、医師自らが計画を立てて実施する治験(医師主導治験)がありますが、本治験は「医師主導治験」です。
本治験は、全国6大学の小児科の専門家が集まり、監督機関である医薬品医療機器総合機構と相談の上で、国立研究開発法人日本医療研究開発機構からの研究開発費を申請したところ、有用かつ適切な研究であることが認められて実施することになりました。
私たちは、これまで産婦人科の先生方と協力をして先天性CMV感染の診断方法の開発や、感染予防法の普及活動などを行ってきました。(国立研究開発法人日本医療研究開発機構「母子感染によるリスク評価や予防法を含む母子保健体制構築と技術開発研究」班(研究代表者藤井知行東京大学産婦人科教授))
今回は、国内で症候性の先天性CMV感染の赤ちゃんに安全で有効な治療法を開発する目的で医師主導治験を計画しました。